上から何か落ちてきた。
思わず右手でそれを掴む。
右手の中でわさわさと何かが動いてる感触がする。
おそるおそる見ると……黒く細い物がいっぱいついた長いものが指の間から出ている。
ムカ………
「痛っ」
状況が掴めず、しばらくぼーっとしてた。
あー、夢だったんだ。
ホッとした。
その時気づく。
右手が何かを握ってる。しかも軽い痛みがある。
まさか………
数秒固まった。
おそるおそる右手を開いてみた。
何もない………安堵のため息をついた黒猫であった。
2月半ば頃から今の季節まで、連日のように私を悩ましてくれるものがいる。
鶯である。
鳴き声が下手なんだこいつが。
ホーホケッホッ…………キョキョーー
どこの怪人だ、と思うくらいに本当にこんな鳴き声を出す。
ところで鶯って同じ場所で暮らすらしい。
(居住)1年目は鳴き声を練習してるのか、とにかくうるさい。
休みの日に朝寝を決め込んでると、うるさくて眠れないのだ。
2年目になると少しマシになる。
けどやっぱり下手だ。
うるさい。寝れない。
3年目はガラッと様変わり。
ああ、いい声だと思う。
つい先ほどから鶯の声が響いている。
きれいに鳴くようになったな。
しばし聞き惚れた。
同じ鶯とは限らないが、あの下手な鳴き声をずっと聞いてきた身としては、
「うまくなったな。頑張ったな」
と思ってしまう。
そんな日暮らし。
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